運行管理者ってどんな仕事?必要な資格は? バス会社を支えるマルチタスクプレーヤーに迫る!
修学旅行やバス遠足など、多くの人が一度は利用した経験があるであろう貸切バス。この貸切バスの運行には、あらゆる角度から調整・管理し、安全な運行に大きくかかわっている運行管理者という存在がいます。バス事業において決して欠かすことのできない運行管理者。いったいどんな仕事をしているのか、その秘密にフォーカスします。
本記事は貸切バスの運行管理者を目指す方に向け、一般的に必要とされる事例をまとめたものです。
仕事内容や条件は、各社によって異なります。
「運行管理者」とは、どのような職業?
運行管理の仕事は、“事業用自動車”を安全に運行するための管理業務をおこなう仕事です。まずは、それぞれの事業について理解を深めていきましょう。
貨物自動車運送事業の種類
事業用自動車を運行する事業は、大きく分けると貨物自動車運送事業と旅客自動車運送事業があり、貨物自動車運送事業は「一般貨物自動車運送事業」、「特定貨物自動車運送事業」、「貨物軽自動車運送事業」があります。
旅客自動車運送事業の種類
一方、旅客自動車運送事業は、「一般乗合旅客自動車運送事業」(路線バス、高速バス)、「一般貸切旅客自動車運送事業」(観光バス、貸切バス)、「一般乗用旅客自動車運送事業」(タクシー、ハイヤー、介護タクシー)、「特定旅客自動車運送事業」(幼稚園バス、スクールバスなど)に分かれています。
これら事業用自動車の運行は、荷物やお客様を安全に目的地まで運ぶため、自動車の運行をさまざまな角度、要素から把握し、適切な管理をおこなわなければなりません。この管理をおこなっているのが「運行管理者」です。
運行管理者になるために必要な資格とは?
それでは、運行管理者になるためには、どのような手順を踏み、どのような経験や資格が必要なのでしょう。
運行管理者は、国土交通省の地方運輸局が管轄する運輸支局などなどから「運行管理者資格証」の交付を受けなければなりません。これは「国家資格」で、自動車運送事業には欠かせない資格です。
運行管理者資格証の交付を受けるには
運行管理者資格証の交付を受けるためには、以下の方法があります。
- 運行管理試験に合格する
- 国が定めた一定の実務経験などの要件を満たす
※一般貸切旅客自動車運送事業を除く
さらに運行管理試験には受験資格があり、以下のいずれかの条件を満たした場合に受験ができます。
- 運行管理に関する1年以上の実務経験
- 基礎講習の修了
貸切バスの「運行管理者試験」
今回フォーカスしている「貸切バスの運行管理者」の場合、一般貸切旅客自動車運送事業になるため、運行管理者試験に合格する必要があります。
運行管理者試験は、公益財団法人運行管理者試験センター(国土交通大臣指定試験期間)が8月頃と3月頃の1年に2回実施しています。なお、運行管理者試験は「貨物自動車運送事業の試験」と「旅客自動車運送事業の試験」に分かれているため、貸切バス事業の運行管理者をめざす場合は「旅客自動車運送事業の試験」を受けます。
運行管理者試験の内容
試験の内容は、道路運送法や労働基準法など、法令に関する知識を問われる出題分野が多く、法令関係に加え、運行管理の実務に必要な知識・能力に関する問題が出題されます。
運行管理者試験の合格率は、30%台で推移しており、資格取得は必ずしも簡単とはいえませんが、近年、試験方法が筆記試験ではなく、CBT試験というパソコンとマウスを使って回答する試験方法が導入され、指定された1カ月の期間で希望する試験日を選択することが可能になっています。
このため、少なくとも貴重な年に2回の受験のチャンスは、逃しにくくなったといえそうです。
貸切バス会社での運行管理者の具体的な仕事
ひとことで貸切バスの安全な運行を管理する、といっても、実は想像以上に多くの業務を担っているのが運行管理者です。運行管理者の多岐に渡る知識や経験、スキルを知れば知るほど「マルチプレーヤー」という表現がぴったりな職種だとわかります。
1.貸切バスの運行全般について
- バスの車両および車両点検についての管理・把握
- バスの運行経路について、その道路状況や交通状況などを事前に調査し把握する
- 悪天候や天災によりバスの運行について安全確保が難しい場合、バスドライバーやバスガイドに必要な指示をおこない、安全を確保する措置をとる
- 長距離運行、夜間運行の場合は、交代するドライバーを配置する
- タコグラフの管理と記録保存
※タコグラフとは運行記録用計器の一種で、運行中の走行速度変化などをグラフ化して車両の稼動状況が把握できる
- 乗務員台帳の作成と管理
2.貸切バスドライバーに関して
- バスドライバーの乗務前後に点呼を実施
- バスドライバーが記録した乗務記録を管理保存
- 必要に応じて指導・監督を実施し、その記録を保存する
- バスドライバーが走行中に体調不良になった場合、安全な運行が不可能と判断した際に交代するバスドライバーを手配するなど安全運行のための措置をとる
- バスドライバーの適切な乗務割を作成し、無理な運行にならない乗務をさせる
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3.顧客対応ほかその他の業務
- 窓口対応
- 電話応対
- 庶務業務
以上の業務内容は、細分化されていたり、すべてを担っていたり、勤務する会社の体制によって異なりますが、場合によっては、以上の業務内容をすべておこなっている運行管理者もいます。
さらに日常的な業務のベースとなる変更される可能性がある法令について、アンテナを張り、知識をアップデートする努力も必要です。
運行管理者のある日の1日
アルコール検査 | どのバス会社でも必ず検査を行います |
出庫前準備 | 天候や運行ルートの事前確認、担当する運転士やバスガイドと共有すべき情報をまとめます |
出庫するバスドライバー・ガイドの点呼 | 運転するバス・ルートに間違いがないか確認、車両の状態、酒気帯びの有無、健康状態の報告を受けます |
バスドライバー・ガイドのシフト調整 | ツアー予定や予約状況にあわせて、先々のバスと人員の配置をおこないます |
運行中のバスドライバーと無線で状況確認 | 予定通り運行ができているかを確認 |
トラブルの対応 | 不測の事態が起きた際の的確な指示出し |
帰庫したバスドライバー・ガイドの点呼 | 車両の状態、酒気帯びの有無、健康状態の報告を受けます |
日報のチェック | ドライバーが提出した日報をチェック |
1日の業務終了(退勤) | 翌日の運行予定を確認して退勤 |
以上は、1日の流れの例ですが、バスの運行が早朝だったり、深夜に及んだりする場合、運行管理者は必ず事務所に詰めていなければなりません。
このため、貸切バスの運行状況に合わせてシフト制で勤務をおこない、出勤時刻や退勤時刻は日によって異なります。
運行管理者の魅力とは?
広く・深くバス運行事業業務に精通
携わる業務が多岐にわたり、それを過不足なく遂行していくためには相応の知識と経験が必要です。この部分だけを見ると、大変な仕事であり、さらに勤務体系がシフト制ともなると、体力的な要素も問われてくるため、知力・体力・対応力が必要な仕事といえます。
そのなかで、やはり注目したいのは、マルチタスクをおこなっている分、貸切バス事業について、会社のなかでもより広く、深く業務に精通しているという点です。
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国家資格を有したプロフェッショナル
貸切バスを運行する会社では、整備関連の技術部門があれば、整備士という国家資格保持者が在籍します。運行管理者と整備士のいずれも表に出て仕事をする派手さはありませんが、確固たる実力をつけながら、縁の下の力持ちとして仕事を進める職務といえます。
また、運行管理者は、さまざまな業務をおこなう分だけ、バス運行会社の全体を把握しているともいえます。このため、各部署間・スタッフ間の事情に精通し、会社全体の業務を円滑に進める潤滑油の役割を果たしているともいえます。
そのような観点から、さまざまな知識、経験、より多くの業務、会社の事業などの事情に精通し、社内外を含め観光バスに乗車する人の命を守るプロフェッショナリズムは、仕事人生のなかで何物にも代えがたい魅力ではないでしょうか。
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まとめ
運行管理者の仕事は、普段、一般の人、ともすれば表立っては同僚さえ見えていないところで、まるで優雅に湖面に浮かぶ白鳥が、水面下では一生懸命足を動かしているように、あちこちに気を配りながら、さまざまな業務をおこなっています。
バスに乗車されるお客様はもちろん、バスドライバーやバスガイドのようにバスに乗務するスタッフの安全、そしてその安全を陰から支える整備士や内勤のスタッフの間の調整を通じて、トラブルがなくて当たり前という前提で、安全を守っているプレッシャーがあり、責任の重い仕事です。
ですが、その責任がある仕事だからこそ、やりがいがあり、何年、何十年と経って振り返ってみると、大きな成長や達成感を感じられる職業といえるかもしれません。少なくとも、バスを運行する会社がある限り、決して欠かすことはできない「バス事業の要」といえる仕事が運行管理者です。
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