バスガイドの仕事とは? 札幌観光バスの“旅のサポーター”の1日
札幌観光バスには、現在、バスガイド職に就く社員が5名います。例年、新卒で1〜2名のバスガイド職の人材を募集、採用を続けており、勤続年数20年を超えるベテランも在籍しています。
バス運行会社の職種のなかでも、おそらく一般の方が最も親しみを感じるバスガイド、そして日本ならではの文化ともいえるバスガイドの仕事を紹介します。
日本ならではの文化「バスガイド」
「バスガイド」の仕事といえば、真っ先に思い浮かべるのは、「バスから見える風景やバスの目的地、観光地での観光ガイド」でしょう。知識の宝庫ともいえる経験を積んだバスガイドさんのトリビア的エピソードを思い浮かべる方もいるかもしれません。実はバスガイドという職業は、日本ならではの文化のようです。
日本のバスガイドがバスの道中から観光地までお客さまに同行し、観光ガイドやバス内で歌を歌うなどのレクリエーションのほか、おもてなしに通じる業務に特化した仕事であることに対し、海外では観光バスに同乗し観光ガイドをするツアーガイドさんはいますが、バスガイドとは異なり、添乗員の仕事をおこなうツアーガイドが必要に応じて観光ガイドをおこなう場合がほとんどのようです。またはバスツアーでの自動音声ガイドの利用も見られます。
札幌観光バスのバスガイドの1日
その日本文化ともいえる「バスガイド」の仕事は、観光名所などのガイド業務だけではなく、その前後にさまざまな業務をおこなっています。例えば、札幌観光バスでのバスガイドの1日の始まりは、早い日には朝5時50分。バスの出庫30分前には出社しますが、お客さまとの待ち合わせ場所や時刻によってバスの出庫時刻が異なるため、日々、仕事の開始時刻が変わります。
余裕をもって1日の仕事を始めるため、実際には出庫時刻30分前より早く出社することも。そして出庫時刻までの30分間に、その日のツアーでお客さまに行程をわかりやすく説明するための“地図”も準備。
時代だから、ではなく清掃は基本中の基本
バスガイドの“お仕事グッズセット”を揃えて積み込んだり、バスの中で使う水を入れたポット(お客さまが薬を飲んだりする際に必要)の用意やお客さまが乗り込む前のバスの清掃状況を最終チェックしたり。前日にバスの清掃は済ませていますが、気になるところは再度水拭きし、ゴミ袋などの備品のセッティングもおこないます。このような準備をし、ようやくお客さまが待つ場所へと向かいます。
ハプニングにも常に冷静に対応
お客さまがバスに乗り込みツアーが出発すると、同行する添乗員さんの挨拶や説明ののち、バスガイドがマイクをバトンタッチ。ここから“ガイド”の仕事が始まります。ときには急病人が出ることや、天候悪化により交通状況が刻々と変わるなどのハプニングが起きることも。そのような場合、直接の対応・調整は添乗員さんの担当業務ですが、バスガイドは現地の地理に詳しいため、ドライバーと一緒に最善の策を考え、添乗員さんをサポートします。
宿泊先でも翌日の準備
そして宿泊がともなうバスツアーでは、お客さまを宿泊先にお送りしたあと、ドライバーと一緒に自分たちの宿泊先へ。大型バスを駐車できる場所が限られるため、お客さまが宿泊するホテルや旅館とは離れた場所で宿泊することも少なくありません。そして1日のバスでの業務が終わると、バス内の掃除を徹底して行います。その後、自分たちの宿泊先で夕食を摂り、翌日のガイドエリアの情報やスケジュールを再確認してから就寝します。
バスガイドの仕事は体力勝負!
バスの中で立ち続けることが多いバスガイドの仕事は、体力勝負でもあり、翌日に備え、十分な睡眠をとるよう心掛けることも大切です。初対面のお客さまをバスで快適に過ごしていただくためのサポートと同様に、全国から訪れる添乗員さんがスムーズに北海道でのツアーを運行できるようサポートしながら、メインの業務、バスガイドの仕事をしています。
フットワークと飽くなき探求心で情報収集
専用テキストを参考に観光地などの知識を暗記した新人バスガイドは、バスの中から見た光景をひと通りすらすらとご案内できるレベルで独り立ちします。ところが、現場では単に暗記した知識だけがすべてではない点がバスガイドの「エキスパート」としての腕の見せどころです。
赤信号タイムを制してこそ一人前!? 気分はMC
バスガイドが口をそろえていう難関ポイントのひとつは、意外にも「赤信号」。バスが名所に近づき、そろそろ窓から見えそう、というときにその名所のガイドを始めますが、そんなときに赤信号や渋滞でバスが止まってしまうと、いつもは1分で到着する場所に何分もかかり、定型のガイド内容では説明のタイミングがずれてしまいます。そんなとき、バスガイドの臨機応変な対応力が問われるところとなります。もはや、MC力といってもよいかもしれません。
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愛読書は旅行雑誌
お客さまを飽きさせず、楽しい内容をお届けするための対応力、トーク力はどのように培っていくのでしょう。それは、日頃の「情報収集」にほかなりません。ベテラン、新人にかかわらず、愛読書を聞いてみると、「じゃらん」や「地球の歩き方」という声がかえってきます。趣味と実益を兼ね、このチョイスになるそう。
さらに行く先々の観光施設などで配布しているパンフレットを参考に、現在持っている知識を最新情報にアップデートすることも欠かしません。今はスマートフォンで大抵のことは調べられるようになりましたが、それでも、昔のパンフレットにしか載っていない情報がある場合も。
プライベートでも「ここは」と思う観光地へ出向くこともあり、事前準備と日頃からの情報収集力は、まるで足で情報を稼ぐ記者のようです。
「知床旅情」や「霧の摩周湖」を十八番に
新人バスガイドにとって余念がないのは、「歌を覚える」こと。修学旅行などで思い出がある方もいると思いますが、旅先で歌ってくれるバスガイドさんの歌は、旅行のなかでもとりわけ思い出深く記憶に残ることもあるからです。そこで新人バスガイドは、自分の生まれた年より前に流行った曲も含め、北海道にゆかりがある「知床旅情」「虹と雪のバラード」「霧の摩周湖」などの曲を心を込めて歌えるよう、日頃からCDを聞きながら歌の個人練習もしています。
「歌うこと」が大好きなバスガイドを発見 → こちら
ハード? いいえ、それ以上に楽しい、が勝るのがバスガイドの仕事
ツアー中、バスの中では立ったり座ったり、目的地では常に先回りをして動き回ることもあるのがバスガイドの仕事です。1日が終わると足がパンパンになることも。また、ガイド業務を覚える以外にも観光地・名所のローカル知識をどれだけ増やせるかという点も、大変といえば大変かもしれません。そのなかでも、この仕事には何にも代えがたい“やりがい”があるのがバスガイドの仕事です。
お客様からのお手紙に感動
バスツアーでは個人情報などの観点から、基本的にお客さまの個人名を知らされることはありません。それでも後日、お礼のお手紙をいただくことがあり、その際は不思議と「あの方だ」と顔が浮かび、わざわざお手紙を書いて郵便ポストまで投函しに行ってまでお便りをくださった気持ちが何物にも代えがたい財産として、毎日のモチベーションになっています。
お客さまからのお手紙やハガキをもらった時には本当にうれしく、「この仕事をしていて良かったな」「また明日も頑張ろう」と思える瞬間です。
名所のガイドをベストなタイミングで伝えたい
観光ガイドのエキスパート、バスガイドならではのこだわりで達成感を感じるポイントは、特に「お客さまがバスから名所を最も見やすいポイントにドライバーさんがバスを停めてくれるタイミングと、自分のガイドのタイミングがぴったり合ったとき」と、「人や車の往来が多い人気観光スポットで、バスから降りてお客さまをご案内しつつ説明をする“下車案内”で、安全に気を配りながら周りの状況を把握しつつ的確なガイドができたとき」。
ほんのわずかなタイミングのずれは、お客さまにはわからないレベルかもしれませんが、プロならではの細かなこだわりを持ちながら、お客さまにバスツアーでの一期一会のエンターテインメントを体験していただきたいと、日々、最高のタイミングを模索しながら切磋琢磨しています。
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「バスガイド」は“旅好き”にこそお勧めしたい仕事
旅が好きな方は多くいらっしゃいますが、旅好きな方が目指す職業は、旅行添乗員や観光地の施設、ホテル業界などがよく聞かれます。ですが、実はバスガイドは、旅好きにぴったりな究極の職業かもしれません。
というのも、ある程度の体力は必要ですが、観光地や名所、ローカルエリアの魅力をいち早く知ることができ、常に旅先で最新情報をアップデートできる仕事だからです。旅が好き、地域の魅力を知りたい、そして多くの方にその魅力を知ってもらいたい。そんな旅好きなら、バスガイドの仕事は、お客さまと楽しさを共有しながらキャリアを積むうちに仕事での楽しめるポイントが次第に増え、いつの間にか旅のエキスパートになっている、なかなか珍しい仕事かもしれません。
観光スポットや話題のグルメをはじめ、その地の達人から見聞きした小粋な話まで、とにかく情報量が豊富です。
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